スリー・キングス 特別版 (JUGEMレビュー »)
一九九一年、湾岸戦争停戦直後、イラクがクゥエートから略奪した金塊を横取りしようと敵地に乗り込み、悪戦苦闘の結果、目的の金塊は手に入れたものの、反体制派のリーダーの妻が、幼い子供の目の前でフセインの国民軍に殺されるのを見てしまい、彼らの国外脱出に手を貸す、というストーリー。
劇中の BGM がビーチボーイズだったり、アメリカ兵を無視してイラク兵と反体制派が小競合いをしたり、戦争映画なのにどこかコミカルだったりする。一応、戦争だから人が死んだりもするんだけど、それを差し引いても楽しい映画だった。イラク兵に捕まって、隙を見て携帯電話で妻に連絡するところなんか面白い。また、DVD には吹替えもあるが、音声は英語にして観ると面白い。
湾岸戦争の頃って、今のブッシュの親父さんが大統領だよね。言葉の端々に皮肉っぽいメッセージが込められているようで面白い。というか、青臭くないアメリカ批判といえるのだろう。これを笑い飛ばせてしまえるなら、アメリカも侮れないと思った。
イラクの脱走兵に協力を要請する際に Geoge Bush wants you. なんていうのも笑えた。I want you. って、有名なアメリカの徴兵用宣伝ポスターの名文句だよね。 携帯電話のシーンとか、金塊を運ぶ際にヴィトンのバッグを使ったり、ベンツで砂漠を往くとか、消費経済の象徴っぽい感じ。
「マイケル・ジャクソンのつぎはぎだらけの顔は病んだ国アメリカの象徴だ」というイラク兵の言葉にはドキッとした。黒人が黒い膚を憎むようなアメリカは病んでいる、というのである。そこで「彼は自分の意志で整形したんだ」と言っても説得力を持たない。確かに彼は自分の意志で整形したのだろうけど、何故そうしたのかを考えると悲しくなる。
物語の後日談として、ゲイツ少佐とチーフはハリウッドで軍事アドバイザーとなったということになっているが、トロイはカーペットの会社を設立ということになっている。逮捕されたので金塊は手に入っていないはずだから、設立資金とかはどうなっていたのだろう。イラクからイランに亡命した難民のコネで絨毯を輸入販売しているということなのだろうか。
映画自体が人生の中ではオヤツなのだけど。というか、芸術とか学問にしても人類にとっての必須栄養素ではないんじゃないかと思うわけ。で、思うわけだ、「この映画は痛快娯楽アクションオヤツ的映画だ」と。 思想とかイデオロギーで映画を観ちゃいけないよね。基本的に映画は楽しむもので、それが悲劇だとかホラーだったとしても、それは悲しみを楽しんだり、恐怖を楽しむために観ているわけで、悲しいごっこ、怖いごっこなわけだ。逆に、そういう物語に本気で感動してしまう人っていうのは、かなり危ない。人生を踏み外してしまう可能性すらある。感動っていうのは、人間を容易に転落させる。
大切なのは、たとえ感動しても自分を見失わないことだと思うわけさ。感動して自分を見失ってしまうような人は、危ない新興宗教なんかに簡単に引っかかってしまうだろうし、プロパガンダやイデオロギーなんてものに心酔してしまうんだと思うわけよ。学生運動もオウムも、崇高な理念は持っていたのだろうけど、結局は暴力集団でしかなかったからね。
つまり、アメリカの正義に感動した人たちが、他所の国に武力攻撃をしていたわけで、正義なんて胡散臭い。まず疑ってみようということ。